2008

05.23

« 「狂う」=拾漆= »

 きみの指が、すぅー、と艶めかしくあいつの首を撫でた。
 それから、そっとあいつの手首を握った。
 そして、瞼の向こうの瞳孔を確認した。

 あいつは、死んだ。
 きみが、殺した。

「う、わ…」

 どれくらい経っていたのだろう。
 私は、屍体に馬乗りになったまま、しばらく放心していた。
 そして私は、思わず声をあげてしまった。

 あいつの…穴という穴から、液体が……流れ出てきた。

「生理現象だよ」

 きみに答える。

「ヒトは肉体が死んでしまうとね……こう、なってしまうんだ。
 本で読んだよ、見たのは初めてだけど」

 そう言って彼は、屍体から離れた。

「きみは、汚いと思うかい?」

 きみからの返事はない。

「別に…汚くなんかないさ。
 ヒトは、当然通るべき路さ」

 彼の解説は続く。

「でも、僕がいる限り、きみはこうはならない」




To be continue.

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    2008

05.16

« 「狂う」=拾陸= »

 四肢が、あつい。
 指先に、血液が溜まっていくのがわかる。

 そうか…死ぬって、こんな感じなのか……そりゃ、ちょっとは苦しいけど、思っていたほど不快じゃない。
 窒息死、だからだろうか…それとも、あのヒトもこんな風に消えたのだろうか………いや、きっともっと簡単に、抗う術を思いつく間もなく殺されたんだろう。

 い や 、 殺 し た 。

「…死んだ?」

 彼に尋ねられ、血の気のなくなったあいつの顔を見つめながら、そっと、つい先程まで絞めていた頸動脈に指をあてた。

 血が流れている様子はない。

 念のため、脈をとり、眼球をみた。
 示されたのは、あいつとあのヒトの體が、生命活動を停止したという事実。




To be continue.

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    2008

05.09

« 「狂う」=拾伍= »

 その言葉を聞いたあと、僕の身体は無意識に動いていた。

 いや…僕の意識を抑えて、そう、きみが、動かしたんだね…。
 きみは本当は、僕の意志にも負けないくらい強かったのか。

 あいつを突き飛ばす、僕の腕。
 あいつを跨ぐ、僕の脚。
 あいつの首を絞める、僕の指。

 それらを指示する、きみの思考。

「うぅ……」

 つい、呻いてしまった。

 あのコに…こんな力があったなんて……。

 首を絞めるあのコの手首を掴んだ。
 でも、びくともしない。

 どこに…こんな力が潜んでいたのか。

「許さ、ない」

 口から漏れた声は、どっちが言ったものだっただろうか。

「さ よ な ら」

 やけにはっきりと、あのコの口が動いた気がした。

 そうか…死ぬのか。

 あのヒトと、同じところへ………




To be continue.

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    2008

05.02

« 「狂う」=拾肆= »

 私の顔が、驚いたのがわかった。

 おそらく、驚いたのは彼……彼自身も、知らなかったのだろうか…あいつに、いつ消されるかわからないことを。

 そう思ったら、急に彼に同情してしまった。
 そして、同時に怒りが込み上げてきた。
 あいつを、睨み付けた。

 彼は、何も言わない。

「なんだい、その反抗的な眼は…」

 あのコのその、反抗的な眼につられて、意地を張ってしまいそうだ…

「本当、なんだ…?」
「当たり前だろう」

 再確認で…最終確認だった。
 これで肯定されたら……私は、決心していた。

 あいつはそんな事を知る由もなく、いとも簡単に肯定した。




To be continue.

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    2008

04.25

« 「狂う」=拾参= »

「あいつ、だよ」

 あのコは、無理矢理口を挟むように言った。
 いや、おそらく本当に口を挟んだんだろう。

「何が悪い。
 自分のものが要らなくなったから、自分で処理したんだ」
「じゃあ、私も…彼も、不要になったら消すの」

 そんなこと不可能だ。
 きみは、僕のもの…あいつには、壊せない。

「そうだよ」

 口が滑った。
 こんなこと、言うつもりは無かった…。
 あのコを壊せるのは、あのコ自身だけなのに…




To be continue.

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